2023-03-19 病室の明かり 墨汁一滴 病室の3方には襖(ふすま)が10枚あって、茶色の紙を貼ってあるが、その茶色も銀の雲形も大方ハゲてしまった。 左のほうの柱には、古笠と古蓑(ふるみの)が掛けてあって、右のほうの暖炉の上には写真板の手紙の額が黒くなっている。 北側の半間ほどの壁には坊さんの書いた寒山の詩の小幅がかかっているが、とてもシブい字である。 どこを見てもなんだか陰気で寂しい感じであった。 その間に、大黒様の状差しを掛けた。 病室がにわかに笑い出した。 (1901/03/19)