Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

それでも鯉は鯉

 ある日、佐千夫が鯉を3尾持ってきて、これをタライに入れて、羽が病床の傍らに置いた。で、

「君は病気で籠りっきりになって、外に春が来てることも知らんだろう。だから今日は鯉をもってきて、春水四沢に満ちる様を見せてやろう」

 と、実にユーモラスなことを言う。だったら私も1句をモノにしようと思ったのだが、思うようにできなかった。

 どーにかこーにか作り直し作り替え、とようやく10句できた。

 とはいっても、数的には10句でも、実質的にはそうではない。一つの意味の句を、10通りの書き方をしただけである。

 

  • 春水の盥に鯉の噞喁あぎとかな
  • 盥浅く鯉の背見ゆる春の水
  • 鯉の尾の動く盥や春の水 
  • 頭並ぶ盥の鯉や春の水 
  • 春水の盥に満ちて鯉の肩 
  • 春の水鯉の活きたる盥かな
  • 鯉多く狭き盥や春の水
  • 鯉の吐く泡や盥の春の水 
  • 鯉の背に春水そゝぐ盥かな 
  • 鯉はねて浅き盥や春の水

 

(1901/03/26)