Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

蚊の季節

 健康な人はちょっと蚊が出たくらいで大騒ぎしてうるさがっている。

 病人はフトンの上で寝たきりで、腹や腰の痛さで時々わめく。高熱が出ると全体が苦しいから絶えずうなる。蚊なんてのは四方八方から全軍こぞって刺しに来る。

 手は天井からぶら下げた力紐にすがっているので、蚊を打つことはできない。仕方がないので蚊帳を吊ると、今度は力紐がなくなるので、病人は勢力が半減してしまう。

 そのうえ、夜も眠れないとあってはもう、やるせないったらありゃしない。

 

(1901/07/01)