Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『明星』の落合氏の歌④

舞姫が底にうつして絵扇(えおうぎ)の影見てをるよ加茂(かも)の河水 この歌は場所が明らかでない。賀茂川付近ということは明らかなのだが、この「舞姫」なる人物が、河岸に立っているのか、水の中に立っているのか、船に乗っているのか、河中に置いた縁台…

『明星』の落合氏の歌③

簪(かざし)もて深さはかりし少女子(おとめご)のたもとにつきぬ春のあわ雪 カンザシでもって雪の深さを測るってのは、畳算と一緒で、ドドイツの材料みたいにイヤミが多く、ここには適さないようである。 「はかりし」とここには過去形になっているけれど…

『明星』の落合氏の歌②

いざや子ら東鑑(あずまかがみ)にのせてある道はこのみちはるのわか草 この歌は一目見ただけでヘンな歌である。まず第1句にて「子ら」と呼びかけたのであれば、全体が「子ら」に対する言葉になる。と、思いきやそれは第4句までで終わり、第5句は突然に風景…

『明星』の落合氏の歌

廃刊になったと言われていた『明星』は、廃刊になったワケではなく、この度第11号は平常通りに出版された。相も変わらず、モッタイナイくらいに上等な紙を使っている。 前々から気にしていたように、短歌の批評をやってみようと思うのだが、ナニブンその数が…

歌の善し悪し

この前の短歌会で、「一番素晴らしい歌ってのは、だれが見ても理解できるものだ」とある人が主張したところ、「歌ってのは、いいものになればなるほど、ソイツを理解できるものは少なくなるんだ」って反対するヒトも出て、なんかタイヘンな議論になった。 オ…

それでも鯉は鯉

ある日、佐千夫が鯉を3尾持ってきて、これをタライに入れて、羽が病床の傍らに置いた。で、 「君は病気で籠りっきりになって、外に春が来てることも知らんだろう。だから今日は鯉をもってきて、春水四沢に満ちる様を見せてやろう」 と、実にユーモラスなこと…

また、雑誌の話

羽後能代(うごのしろ)の雑誌『俳星』は第2巻第1号を出した。為山(いざん)の表紙模様は、蕗の林に牛を追うデザインが斬新で、しかも模様化されているところが、古雅であり妙と言わざるを得ない。 破笛が『ホトトギス』の表紙デザインの募集に応じて、また…

「~顔」という表現

加賀大聖寺(だいしょうじ)の雑誌『虫籠』の第3巻第2号が出た。裏画の「初午(はつうま)」は道三の筆によるものなので、とてもうまくできている。ただ、蕪村の句が書いてあるのだが、あまりバランスのいい配置ではない。 この雑誌の中の「重箱楊枝」と題す…

夜半亭を継ぐもの

大阪の雑誌『宝船』第1号に、蘆陰舎百堂(ろいんしゃひゃくどう)なるものが三世夜半亭を継いだ、と説明してその証拠に「平安夜半(へいあんやはん)翁三世浪花蘆陰舎(なにわろいんしゃ)」と書かれた本人の書を挙げていた。 だけども、これはトンデモない…

無題

3日後の天気予報を出してもらいたい。 (1901/03/22) 大丈夫か!? 最近短文が続いてるかと思ったら、ついのここまでヤバくなっちまった。 それにしてもなぜ、3日後の天気が知りたいのか。いったい何が起きたのか。 新部良仁

露伴の評価

幸田露伴の『二日物語』というのが出たから、久々に読んでみて、露伴がこんなツマラン文章(趣向のことではない)を書いたのかと驚いた。 それを世間では「明治の名文」だの「修辞の妙を極めてる」だのと評価している。 人によってこんなにも評価って分かれ…

坊さんからの指摘

頭の黒い真宗の坊さんが私の枕元に来て、「君の文章を見ると、君は病気のせいで時々大問題を引き起こしていることがある」といった。 それは意外だ。 病牀に日毎餅食ふ彼岸かな (1901/03/20)

病室の明かり

病室の3方には襖(ふすま)が10枚あって、茶色の紙を貼ってあるが、その茶色も銀の雲形も大方ハゲてしまった。 左のほうの柱には、古笠と古蓑(ふるみの)が掛けてあって、右のほうの暖炉の上には写真板の手紙の額が黒くなっている。 北側の半間ほどの壁には…

「宝引」ってなんだ?

「宝引(ほうびき)」というものが、俳句の正月の題にある。実はこれが一体何なのかを知らず、「まあ、『福引』的なものでしょ」と思っていたのだが、この前虹原(こうげん)(山形県大石田の俳人)の説明を聞いて、ナゾが解けた。 虹原の郷里である羽前では、…

漢字の話はもうしない

間違いやすい字として、ある人は「『盡』の上部は『聿(いつ)』である、『(じゅん)』の中は『王』である」などと『説文解字』を引いて論じる。 また、不折は古碑や古い法帖の文字などを提示して、「」「內」「吉」などが、必ずしも「入」や「士」であると…

想像と実際

名前しか聞いたことのない人物の容姿を、あんなかな、こんなかな、とそうぞするのは誰もがやることだろう。で、実際に会ってみてみると、たいていは意外な顔かたちをしていて驚くことになる。 最近、永井破笛の日記を見ると、次のような一節があった。 東京…

奪われたもの

散歩の楽しみ、旅行の楽しみ、能楽演劇を見る楽しみ、寄席に行く楽しみ、見世物や興行物を見る楽しみ、展覧会を見る楽しみ、花見月見雪見などに行く楽しみ、細君を携えて湯治に行く楽しみ、紅灯緑酒(こうとうりょくしゅ)美人の膝を枕にする楽しみ、目黒の…

少女の絵

今日は病室の掃除だというので、昼飯後に病床を座敷のほうへ移された。この2,3日は右になっての仕事が過ぎたためか、ようやくマシになってきていた局部の痛みがまた少しヒドくなってきたので、座敷に移ってからは左に寝て、痛む部分をいたわっていた。 いつ…

パクリの構造

いろんな人の俳句を見ると、その中でも自分の頭脳をシボリにシボッて出したようなものは非常に少ない。多くの者は新聞雑誌に載っている他人の句を5文字だけ置き換えて、ナニクワヌ顔してほかの新聞雑誌に投書している。 一例を挙げよう。 〇〇〇〇〇裏の小山…

不平十ヶ条

不平十ヶ条 一、元老の死にさうで死なぬ不平一、いくさの始まりさうで始まらぬ不平一、大きな頭の出ぬ不平一、郵便の消印が読めぬ不平一、白米小売相場の容易に下落せぬ不平一、板ガラスの日本で出来ぬ不平一、日本画家に油絵の味が分らぬ不平一、西洋人に日…

新しい日本語

漢字廃止論、ローマ字採用、または新字製造なんて言う途方もない議論は興味がない。私はもっと手近な必要性に応じて、至急新仮字(しんかな)の製造を望んでいる。 その新仮字には2種類ある。ひとつは拗音や促音を1文字で表せるようなもので、例えば「茶」の…

著作の目的

自分の著作を売って、原稿料をもらうことは全く悪いことではない。しかし、その作品を書いた理由が原稿料をもらうこと以外に何もない、といったことであれば、著者の心が腐っているはも言うまでもない。 近頃出版された秋竹(しゅうちく)(竹村秋竹)の『明治…

「春」はいつ来るのか

雑誌『日本人』に「春」を論じて、「我国は旧(も)と太陰暦を用ゐ正月を以て春の初めと為ししが...云々」とある。言葉が足らな過ぎて分かりづらい点もあるけれど、「昔は歳の初め、すなわち正月元旦をもって、春の初めとした」というようなことが書いてあっ…

「漢字の話」に対するご指摘

私は漢字の識者というわけではない。それ故に今更に誤字に気づいた程なので、私の書いたことの中にも、きっとヤラカシた部分があっただろうな、と危ぶんでいたら、果たして、ある人物からご指摘をいただいた。 なので、記事内容の訂正のためにこれを掲載し、…

小鳥の水浴び

私が病気になった後、ある人が病床の慰めに、と大きな金属製の鳥かごを借りてきてくれたので、窓際において、小鳥を10羽ほど飼ってみた。 その中にある水鉢ぼ水を変えてやると、すべての鳥が下りてきて、我先にと水を浴びに来る様子が面白くて、病床から眺め…

風呂ぎらい

私は子供のころから湯に入るのが大嫌いだ。熱い湯に入ると、体がくたびれてしまい、その日は仕事ができなくなる。 一日汗を流して働いた者が仕事終わりに湯に入るのは、いかにも気持ちよさそうで、疲れも取れるだろうと思うが、そうじゃない場合は、男にしろ…

漢字の話③

間違いやすい字を以下に列挙。 「段」「鍛」は「たん」の音であり、「假」「蝦」「鰕」「霞」「遐」は「か」の音である。「段」と「叚」は扁もつくりも違うのだが、混同するものが多い。 「蒹」「葭」は「あし」または「よし」の類である。「葭簀張(よしず…

漢字の話②

誤りやすい字を以下列挙。 「盡」は「書」「畫」よりも、横棒が1本少ない。「聿」のように書くのは誤りである。行書で「聿」のように書くこともあるが、その場合には4つの点を打たない。 「逸」「寬」の字には点がついている。これを知らない人が多い。 「學…

茶道の方式

料理人の帰った後で聞いたのだが、『会席料理の魂は味噌汁にあるので、味噌汁の良し悪しでその料理の優劣が決まるほどである。そのため、我々が毎朝すすっている味噌汁とはワケが違う、っていうか雲泥の差であることは言うまでもない。味噌を厳選するのはも…

先月末の会食

2月28日、晴れ。朝6時半にちょっと具合の悪い中、眠い目をこすって起床。家の者が暖炉に火を入れる。 新聞を見ると、きのう帝国議会が停会を命じられたとの記事があった。 包帯を取り換えて、粥を2椀すする。 梅の俳句に目を通す。 今日は会席料理のもてなし…