Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「希望」について

人の希望とは、最初は漠然として大きなものであり、段々と小さく、確実なものになっていくものである。私の病床における希望は、最初から極めて小さいもので、「遠くまでは歩けなくてもいい、庭の中をちょこっと歩けたらいいな」と言っていたのは4,5年前の…

マジメな人ほど

一本の扇子で自在に人を笑わせるような落語家の楽屋は、実はめちゃくちゃ厳格で窮屈なものだと聞いた。 芳菲山人(西松二郎)の滑稽家ぶりときたら、狂歌、狂文、諧謔などなど、尽きることなく作りまくることで有名である。が、その人柄はというと、極めてマ…

贈り物について

人にものを贈るとき、実用的なものを贈るのは、なんだかワイロみたいで心持が悪いこともある。 ふだんあまり使わないようなものを贈ることが、あげる側も気安いし、貰ったほうも面白いものだ。 今年の年玉として、鼠骨が持ってきたものはというと…。 3寸の地…

短歌界を倦む

俳句界は全体的に、一昨年の暮れあたりから去年の前半にかけて盛り上がり始めて、後半はいたく衰えた。 わが短歌界は、というと、去年の夏から秋にかけて著しく発展したけれども、冬以降はトン挫した感じだ。これはなにも、技量が退化したわけではない。しか…

鉄幹と子規

去年の夏ごろ、ある雑誌に短歌のことを論じて、鉄幹(与謝野鉄幹)と子規を併記し、どっちも同じ趣味趣向である、などと書いてあった。 ちょっとまて、どこが一緒なんだ。全然違うだろうが。 言ってしまえば、鉄幹が是なら子規は非、子規が是なら鉄幹が非、と…

墨汁一滴

ここ数年苦しんでいた局部の痛みに加えて、左横腹の痛みが去年よりも強くなって、今はもう筆を執ってものを書くこともできない。てなもんで、書きたいことも書けず、全部腹にたまって、もう心まで苦しくなってきた。 こうなってしまったら、生きていくのも辛…

耳の話

病床で苦痛に耐えきれず、どうにかなっちまいそうな時に、傍らに2,3の人がいた。そのうちの一人が、「人の耳って、よーく見ると結構変な感じしてるよね」などと言って、笑っていた。 なるほど、健康な人は人の耳を観察したりなんかするのか、と初めて知った…

勾玉の贈り物

伊勢山田で商人をやってる勾玉(こうぎょく)(伊勢の俳人・山本勾玉)が送ってきた小包を開けると、いろいろな品物を揃えて、目録が1枚添えてあった。 祈平癒呈(へいゆをいのりてていす) 御両宮之真境(古版) 二 御神楽之図(地紙) 五 五十鈴川口のはぜ(…

蕪村の命日

与謝蕪村は、天明3年12月24日に亡くなった。ということは、節季にして境目の、紛らわしい時期にこの世を去ったわけだ。 で、この日を太陽暦に換算すると、1784年1月16日の金曜日に当たる。つまり、年が明けてすぐ、に没したことになる。 1901/01/20 なんでこ…

根岸の地図

最近根岸倶楽部から出版された根岸の地図は、大槻博士(大槻文彦)の制作で、地形がとても正確なだけじゃなくて、われわれ「根岸人」にとって、かなり面白く、趣深い感じもある。私たちの住んでいる所は今、「鶯(うぐいす)横丁」というのだが、昔は「狸横…

七草のかご

1月7日の会に麓(ふもと)(岡麓)が持ってきたものが面白かった。 長い取手をつけた小さくて浅い竹かごに、木の葉みたいなのを敷いて、土を盛って、七草をちょっとずつ植えたもの。で、ひと草ごとに3,4寸くらいの小さな立札が添えられている。 正面の「亀野…

20世紀の地球儀

病に伏した枕元に、巻紙だの封筒だのを入れた箱がある。その上に温度計を置いている。輪飾(わかざ)りをつけて、病中ながらも新年のお祝い気分に浸り、シダの枝が左右に広がってるのを見て、やっぱりオメデタイナと思ってる。 その下に橙(だいだい)を置い…