Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

その土地の儀式

 『俳星』塚本虚明きょめいの「お水取り」という文があって、奈良の二月堂の水取のことが詳しく書いてある。私はこれを読んでうれしくてたまらない。

 京阪地方にはこのような儀式や祭りが沢山あるのだから、京阪の人は今の内になるべく詳細にその様子を書き記して見せてもらいたい。その地の人には見慣れた、面白くもないものだろうが、初めて見た者にとってはそれがどんなに面白いものかしれない。ことにこの様な事は年々廃れていくから、今うつして書いた文章は、将来その地の人間にも珍しいものとなるだろう。

 

 京都の壬生みぶ念仏や牛祭の記録は見たこともあるが、それも我々のように実地を見たことがないものにはまだわからないことが多い。葵祭あおいまつり

祇園祭ぎおんまつりなんかは陳腐だからか、かえって詳しく書いたものがいない。大阪にも十日夷とおかえびす、住吉の田植えなどというモノがある。奈良に薪能たきぎのうがいまでもあるなら、ぜひとも見て来て書いてもらいたい。

 

御忌ぎょき御影供みえいく十夜じゅうや、お取越、御命講おめいこう...といったものでも、各地方のモノをうつして、比較したら面白いだけじゃなく、有益なんじゃないかと思う。

 

(1901/06/20)