Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

短歌界を倦む

 俳句界は全体的に、一昨年の暮れあたりから去年の前半にかけて盛り上がり始めて、後半はいたく衰えた。
 わが短歌界は、というと、去年の夏から秋にかけて著しく発展したけれども、冬以降はトン挫した感じだ。これはなにも、技量が退化したわけではない。しかし、まったく進歩していないのである。
 私が思うに、短歌界の連中は最近では、何のヒネリも変化もなく、半年くらい前に作った歌のフレーズをパクって、寄せ集めて、それで新作でござい、と発表してるんじゃないか。…とはいえ、私にも思い当たらんことはないというか…。

 

 なので、私は強いて皆に「反省しなさい!」とは言わない。反省するものは反省なさい、立つものは立ち、行くものは行け。もしも疲れて眠いものは、長い夜の眠りを貪るがよい。
 目覚めたときには浦島太郎のように、世間は次の時代に移っているかもしれない。

1901/01/27

 

 


 

「思い当たらんことはない」というのは、子規がずっとトレーニング方法として、でもって仲間内の集まりの余興としてやっていた「一題百句」的なことを言っているのでしょうか。

 のちにも出てきますが、この「一つの題でいっぱい句を作る」あるいは「一つの題で大喜利的に、瞬時に大量の発句をする」という手法は、トレーニングにはなるけれども、そこで生まれた句に、マシなものはあまりない、と子規自身が言っています。

 

 

新部良仁