Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

ワギモコ先生

 元義の歌にはいも吾妹子わぎもこといった単語がかなり多く登場する。そのため「吾妹子先生」などというあだ名で呼ばれたりもした。


 おもうに元義は情熱家で、婦女子に対する愛を詠んだものが多く、彼が事実以外のものを歌にすることがないのと併せて考えると、吾妹子の歌も単なる空想上の産物ではないと言えよう。


古今集』以降、空想に過ぎない恋の歌が作られ続けていたが、元義は、万葉の時代に復古して、ふたたび感情をベースとしたものを作った。
 以下、吾妹子の歌の一例。

 

 

  失題
いもと二人あかとき露に立濡れてむか峰上おのえの月を看るかも

妹が家のむかいの山はま木の葉の若葉すゞしくおひいでにけり

鴨山の滝津たきつ白浪しらなみさにつらふをとめと二人見れど飽かぬかも

久方のあま金山かなやま加佐米山かさめやま雪ふりつめり妹は見つるや

 

(1901/02/19)

 

 

 


 

 ここで登場する「いも」「吾妹子わぎもこ」というのは、「婦女子」「恋人」といったような意味。「ハニー」とか「カワイコちゃん」的なニュアンスもあります。

新部良仁