私は子供のころから湯に入るのが大嫌いだ。熱い湯に入ると、体がくたびれてしまい、その日は仕事ができなくなる。
一日汗を流して働いた者が仕事終わりに湯に入るのは、いかにも気持ちよさそうで、疲れも取れるだろうと思うが、そうじゃない場合は、男にしろ女にしろ、どうせナマケモノに違いない。特に楊枝を加えて朝湯に出かけるなんて、堕落の極みだ。
東京の銭湯は、湯がやたら熱いから、もうちょっとぬるくしたらいいのに、と思っていたが、いっそこと銭湯なんてやめちまって、みんな冷水摩擦をやったら、日本人も少しは活発になるだろう。
熱い湯によって、ダルダルになって、「あぁ、極楽だわい」なんて抜かしている間に、日本銀行の金貨はどんどんと海外に流れてしまう。
(1901/03/06)