Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

春雨の午後

今日は朝からの春雨でやや寒さを覚えたので、フトン被って寝ていた。

 垣根のヤマブキも段々とほころんできて、盆栽の桃の花がセイヨウアオイと並んで高い台の置かれているところなんかが、ガラス越しに見える。

 

 午後になると体が温まってきて、しかも今日は痛みの方もマシな感じなので、静かに俳句の選考に没頭しようとしておった矢先に、本所のお茶のセンセイから1通の封書が届いた。で、開いてみるといきなり、

 

 

擬墨汁一滴ぼくじゅういってきにすぎず              左

 

総じて物にはたらきなきは面白からず。されどもはたらき目だちて表にあらわれたるはかへつていやしき処あり。内にはたらきありて表ははたらきなきやうなるが殊にめでたきなり。


道入どうにゅうらくの茶碗や落椿

 

 春雨のつれづれなるままのたわぶれにこそ

 

――と書かれていた。場合によっては面白いものだ。

 

(1901/04/18)