中村不折が
この際、各自の論の賛否はしばらく置いておいて、普段から茅堂の画に対する姿勢を見るに、観察が粗く嗜好が単純で、到底素人の域を出ないようだ。
もっと詳しく言うと、茅堂は写生の何たるかもよく分かっておらず、鳥羽僧正の写生の技量がどれだけ妙を極めた名人芸であるかも理解しておらず、ただ彼が好きな茶道から得た幽玄で簡単な趣味だけを基準として、「写生だか何だか知らんが、鳥羽僧正の画はちっとも幽玄じゃないし、そこまで珍重するようなものでもない」などと容易に判断して切り捨ててしまっている。
茅堂がもしも画のことを論じようとするならば、もう少し画のことを研究してらにしてほしいものだ。
楽焼趣味、道楽趣味をもって、鳥羽僧正の画を語ろうとするのは、ヒョウタンでもってナマズを捕えようとするようなもんだ。
(1901/04/27)