Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

孝行息子の歌

 岩手の孝行息子のナニガシが、母をリヤカーに乗せて、自ら引いて200里の道を東京まで上り、東京見物を母にさせたそうな。

 このことが新聞に美談として紹介されていた。

 

  

  たらちねの母の車をとりひかひ千里も行かん岩手の子あはれ

 

  草枕くさまくら旅行くきはみさへの神のいそひ守らさん孝子の車

 

  みちのくの岩手の孝子名もなけど名のある人にあに劣らめや

 

  下り行く末の世にしてみちのくに孝の子ありと聞けばともしも

 

  世の中のきたなき道はみちのくの岩手の関を越えずありきや

 

  春雨はいたくなふりそみちのくの孝子の車引きがてぬかも

 

  みちのくの岩手の孝子ふみに書き歌にもよみてよろづまでに

 

  世の中は悔いてかへらずたらちねのいのちの内に花も見るべく

 

  うちひさすみやこの花をたらちねと二人し見ればたぬしきろかも

 

  われひとり見てもたぬしき都べの桜の花を親と二人見つ

 

(1901/05/05)