Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

病床の31文字

 頑張って筆を執って...

 

 

  佐保神さほがみの別れかなしも来ん春にふたゝび逢はんわれならなくに

 

  いちはつの花咲きいでゝ我目には今年ばかりの春行かんとす

 

  病む我をなぐさめがほに開きたる牡丹の花を見れば悲しも

 

  世の中は常なきものと我づる山吹の花散りにけるかも

 

  別れ行く春のかたみと藤波の花の長ふさ絵にかけるかも

 

  夕顔の棚つくらんと思へども秋待ちがてぬ我いのちかも

 

  くれなゐの薔薇ふゝみぬ我病いやまさるべき時のしるしに

 

  薩摩下駄さつまげた足にとりはき杖つきて萩の芽摘みし昔おもほゆ

 

  若松の芽だちの緑長き日を夕かたまけて熱いでにけり

 

  いたつきの癒ゆる日知らにさ庭べに秋草花の種をかしむ
 

 

 だいぶ心細くなっているように人に思われるかもしれない。

 

 

(1901/05/04)