今、東京の小学校で子供を教えている人の話によると…。
東京の子は田舎のに比べると見識の広いこ事は非常に素晴らしいのだが、何をやらせても田舎の子よりも鈍くて不器用である。例えば半紙で帳面を綴じさせてみたら、高等科の生徒であってもほとんど満足に綴じられるものがいない。
これはいろいろな原因もあろうが、すべてが発達している東京のことであるから、一事が万事、それぞれに対応したな機関が備わっていて、田舎のように一人で何でもやる、というスタイルが成り立たないのも、その原因のひとつであろう。
これは子供のことではないが、私は東京に来て、東京の女が魚の料理をできないのを見て驚いた。けれども、東京では魚屋が魚の料理をすることになっているからそれで済んでいく。済んでいくもんだから料理法は知らないのである...云々。
なるほど、面白い話である。私も田舎に住んでいるよりも、東京に住んでからの方が長くなったので、だいぶ東京じみてきて、田舎のことを忘れたが、なるほど、田舎はなんでも一家の内でやるから趣のあることが多い。
洗濯はもちろん、着物も縫う、機も織る、糸も引く、「明日は氏神のお祭りだ」というので女が出刃包丁を荒砥にかけて、チャッチャと鯛のウロコをとったり、ハラワタをつかみ出したりする様は、思い返せば面白い。
しかし、田舎も段々東京化するから仕方がない。
(1901/05/28)