Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

東京人の生き方

(前回の続き)

 

 その先生によると、田舎の子供は男女に限らず歌唱とか体操という授業を嫌がる傾向にあるのに対して、東京の子はそういったものを好むようである、という事であった。

 これらも実に都会と田舎の特色を現わしている。東京の子は活発でおてんばで陽気なことを好み、田舎の子は陰気でおとなしくて、ハデなことを恥ずかしがるという、反対の性質がすでに芽生えている。

 こういう風であるから、大人になって東京の者は愛嬌があって付き合いやすくて、何事にもよくよく気が利いているのに対して、田舎の者は結構ドンくさいけれどもしかし、国家の一大事とか一世一代の大事業という事になると、かえって、田舎の者が先頭を切って、東京っ子はむなしくその一歩跡を追従することが多い。

――一得一失。

 

(1901/05/29)