元義の歌は純粋なる万葉調である。そのため『古今集』以降の歌のように、理屈や装飾といった余計なものは見られない。
また、事実、実景に無いものは詠むことがない。だから、その歌は真摯にして古雅。少しも『古今集』以降のテクニカルで煌びやかな風潮に染まっていない。
ここに数首を抜粋して、一例とする。
天保八年三月十八日自彦崎至長尾村途中
うしかひの子らにくはせと
五月三日望逢崎
五月九日過藤戸浦
あらたへの藤戸の浦に
逢崎賞月
まそかゞみ清き
望父峰
父の峰雪ふりつみて浜風の寒けく吹けば母をしぞ思ふ
小田渡口
神崎博之宅小飲二首
こゝにして紅葉を見つゝ酒のめば昔の秋し思ほゆるかも
盃に散り
(1901/02/16)