Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

俳句に見る地方色

 『日本』に寄せられる俳句を見ると、地方ごとに俳句の調や、その他もろもろに多少なりとも特色がある。なので、同じ地方同士の人間は、万事面白いほどよく似たものがいる。

 同一の俳句、あるいはよく似た俳句が同地方の二人の人物から、ほぼ同時に届くことがしばしばあるが、この場合はどっちがどっちをパクッたのか判然としないので、どっちもボツにする。

 ある地方で俳句会が盛んになると、その会員の句はみな面白いものになり、逆に俳句会が衰えると会員がことごとくヘタになってしまうのは不思議である。

 

 句風以外の特色を挙げようか。

 鳥取俳人四方太しほうだ流の書体が巧みであるが、取手とりで下総しもうさ)あたりの俳人は、キタナくて読みづらい字を書く。

 出雲の人はむやみに多く句を作る癖があり、京都の人の投書は4,50句程度である。

 大阪の人が使う紙は、「大阪紙」ともいわれるキメの粗い紙が多く、能代のりしろ羽後うご)の人は必ずバカみたいテラテラの光沢紙を使う。越中の人だけは、みんな半分に切った半紙を、さらに二つに折ってチイチャイ字で句を書く。

 はがきに2,3句書いてくるのは、どの地方でも共通で、初心者が必ずすることである。

 

(1901/02/28)