『宝船』第1巻第2号の黒柳
「老情がよく表れている」という評だが、私に言わせると月並に近いように思える。
「古くなって木が乾くに従い、反ってくる」とあるのだが、「反椀」ってのは元々形が反った椀なので、古くなって反ったワケではなかろう。
あたゝめよ
この句には季語がない。もし「酒を温める」が季語となるならば、秋季になるであろう。あるいは、連句中につくったの
「四十九年の非を知る」とは『論語』の言葉だったろうか。「ひが事」の「ひ」は「非」にかかっている。
「比喩に落ちているから善くない」と書かれているが、この句の表面には比喩はない。裏面には比喩の面影がある。
無縁寺の夜は明けにけり
「寒念仏」とは無縁の聖霊を弔うために寒中に出歩く事を言うので、この句もむろん、寺の中で僧が念仏を唱えているわけではあるまい。
此村に長生多き岡見かな
「老人がたくさん来て、岡見をしている」のではなく、「老人の多いめでたい村を岡見している」方が正解だろう。
ついでに書いておこう。碧梧桐がこの前、召波の句を読んで深く感嘆していた。私もいまだ十分な研究ができていないけれども、召波の句の趣向と言葉が相乗効果を発揮しているあたり、太祇や蕪村、几董にも勝るように思う。
太祇蕪村一派の諸家には、計り知れぬほどの造詣の深さを持つ者がいる。
(1901/05/02)