舞姫が底にうつして
この歌は場所が明らかでない。賀茂川付近ということは明らかなのだが、この「舞姫」なる人物が、河岸に立っているのか、水の中に立っているのか、船に乗っているのか、河中に置いた縁台の上にいるのか、水上に差し出した桟敷などの上にいるのか、または水に臨む高楼の欄干に持たれているのか、または三条か四条あたりの橋の欄干にもたれているのか...別に詳しいことを根掘り葉掘り、というわけじゃないけど、橋の上か、家の中か、船の中かくらいはわからないと、全体の趣向が感じに乗らない。
次に、第2句のはじめに「底」という字があって、結句に「加茂の河水」と順序を転倒しているのは、前の雪の歌と全く同じ轍を踏んでいる。
「うつして」と言って「うつれる」と言わないのは、ことさらにうつして遊ぶことを言っているのだろうが、このことさらに強調するところがイヤミである。この種のイヤミは初心者のガキがとても好むものであるが、この作者も大好物なのだろう。
「見てをるよ」というのもなんだかミョーチクリンな言葉づかいで、「そーかよ」と悪洒落でも言いたくなる。
(1901/03/31)