Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

臨終の兎

 昨日の夢で、たくさんの動物たちが遊んでいる場所に来た。

 

 その動物たちの中に、死期が近づいたのか、転げまわって煩悶している者がいる。 

 すると1匹の親切な兎がやってきて、その煩悶している動物の傍に行き、自分の手を差し出した。その動物はすぐに兎の手を自分の両手で持って自分の口に当て、嬉しそうにそれを吸うと、今までの煩悶は静まって、とても愉快そうに眠るように死んでしまった。

 

 また、ほかの動物が死に狂いに狂っていると、例の兎は同じようにする。その動物もまた、愉快そうに眠るように死んでしまう。

 

 

 私は夢から覚めても、いつまでもこの兎のことが忘れられない。

 

(1901/04/24)