Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

「ぼうたん」だって?

 このまえ牡丹の句を募集したとき、「ぼうたん」と4文字に伸ばして詠んでいる句がほとんど過半数を占めていて、とても意外に思った。いつの間にこうも全国的にこの語が広まったのだ、とビックリ仰天である。だけどこの語は私の耳にはなじまないので、どの句もなんだかヘンだという印象を感じた。

 

 ある人がいう事には、「蕪村がすでにこの語を使っていたので、まあ別にいいでしょ、と思って我々も平気で使っているのだ」とかなんとか。

 

 うーん、私に言わせると、たしかに蕪村がすでにこの語を使っていたんであれば、こいつを使うことに私が口をさしはさむべきではないだろうが、しかしながら、蕪村は牡丹の句を20もものにした中で、「ぼうたん」と読んでいるのはただの1句だけである。

 しかもその句は

   

   ぼうたんやしろがねの猫こがねの蝶

 

という風変わりな句である。そう考えると、蕪村も特にこの句にだけ使ったように、決して常用していたわけではない。それを蕪村がフツーに使っていたかのように思って、「蕪村も使ってたし」なんていう口実を設けてこれを乱用することは、蕪村的には絶対に迷惑である。このことは特に、蕪村のために強調しておく。

 

(1901/06/03)