Nobo-Sanのボクジュー一滴

正岡子規『墨汁一滴』の超・現代語訳ブログ。やっぱり柿うまい。

蕪村の文台

 伊藤松宇しょうう氏がやってきて、蕪村が使っていたという文台を見せてくれた。天橋立の松を使って作ったそうな。

 木目があらく、上に二見の岩と扇子の中に松を描いてある。筆法が無邪気で蕪村が若かりし頃に書いたものかと思える。

 

 文台の裏には短文を発句があって、「宝暦五年 蕪村」と署名がある。その字はよく見る蕪村の字とはずいぶん違ったものである。

 

 宝暦5年というと、蕪村は41歳だから書法もまだまだ定まっていなかったのだろうか。

 

 なんだか書いていて、ちょっと疑問を持った。

 

 

(1901/06/05)


 

 伊藤松宇は明治から昭和にかけて活動した俳人で、あの渋沢栄一に見込まれて王子製紙の幹部なんかもやってた人。

 で、子規先生とも親交のあった人なんだけども、やっぱり金持っているからかいろんなものを集めちゃう。その中の一つがこの「蕪村の文台」。低めの書き物机です。

 子規先生がリスペクトする蕪村が使っていたという逸品ですが、どーも胡散臭い気がする。っていうか偽物じゃね?

――そんな気のするお話でした。

 

 

新部良仁